有能な秘書として、私は誰にも弱みを見せたことがなかった。――けれど、誰にも言えない悪癖がある。暇になると、つい自分を慰めてしまうのだ。ある夕暮れ時。誰もいない社長室で、私は氷室社長のデスクの角に跨っていた。その時。「……随分、楽しそうだな」背後から聞こえた低い声に、全てを見られていたことを知る。怒鳴らない。責めない。ただ、書類に目を落としたまま、淡々と命じるだけ。――それだけで、私は崩れた。見られるたびに、また崩れていく。止めたいのに、止められない。

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