アルゴリズム百合――恋だけが、最適化できない。 思考も、選択も、感情さえも。すべてをやさしく肩代わりするデバイス「MAYO」が普及した世界。 迷いは消え、間違いもなくなったはずだった。 それでも。彼女の体温に触れるたび、説明できないズレが、胸の奥に残る。彼女の息がかかるたび、湯船の中で肩が触れる。電車の中で指先が重なる。ベッドの上で、呼吸だけが近づいていく。その届かなさが、 むしろ、強く引き寄せてくる。 レンと夏帆。恋人同士のふたり。肩が触れる。指先が重なる。 呼吸が、少しずつ混ざっていく。けれど。 ぴたりとは合わないリズム。わずかに遅れる鼓動。 一瞬だけ、引き離される感覚。その小さなズレが、次の一歩を、ためらわせて―― そして、もっと求めさせる。■登場人物■レン 内気だけど、言葉にする前に感情があふれてしまう子。 人より少しだけ、世界のズレに敏感で――それをうまく説明できないまま抱えている。最近、背伸びするように「純粋理性批判」を開くようになった。そこに、自分の中にある届かなさの正体が書かれている気がしたから。 「どうして私たちは、同じものを見ているはずなのに、同じ気持ちになれないのか」 そんな問いに、答えを探している。 ■夏帆 明るく、まっすぐで、少しだけ意地悪な優しさを持つ子。 レンより一歩、ためらいなく距離を詰めることができる。 指先が触れる前に、空気の温度で気づく。言葉にしなくても、レンの気持ちをを拾ってしまう。 だからこそ、あえて問いかける。 「選んでる?」

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